バーテンダー 神のグラス

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アニメ化の真相に迫る!『バーテンダー 神のグラス』プロデューサーインタビュー

2023.08.26

2024年4月放送予定の『バーテンダー 神のグラス』。
「神のグラス」と呼ばれるカクテルを作る天才バーテンダー・佐々倉溜と、彼をとりまく個性豊かな人物たちが描く人間ドラマが魅力の本作。
今回はアニメ化企画を立ち上げた中心人物である中澤貴昭プロデューサーに本作の魅力、そしてバー、バーテンダーの魅力を語っていただきました。

―アニメ化の企画はどのような経緯で持ち上がったのでしょうか?
3年ほど前、希望が叶い映像作品の企画製作を担当する部門に異動になりました。『バーテンダー』は大好きで思い入れのある漫画でしたので「せっかく自分で企画を立てられるなら、大好きな作品のアニメを作りたい」ということで企画を立ち上げました。タイミングとしても、コロナでバー業界全体が大変な思いをされていることはバーに行っていた身として感じていましたので、作品がバー業界のお役に立てば、と言う気持ちも少なからずありました。



―スタッフ陣はどのような経緯で決まったのでしょう?
アニメーション制作会社のリーベルさんは実績のあるスタジオであるゼロジーさんから社内独立したスタジオさんです。まだ設立したてで、これからいろいろな作品や表現に挑戦していくということでしたので、ぜひ一緒にチャレンジしたいということでお願いしました。倉谷監督やキャラクターデザイン・総作画監督の植田羊一さんもリーベルさんとの間で信頼感が既にしっかりある素晴らしいクリエーターさんということでお願いさせていただきました。
シリーズ構成の國澤真理子さんは以前東宝の作品に携わられていらっしゃって、「人間ドラマを作るのが非常に上手」という印象があったのでご連絡させていただきました。
國澤さんに関しては、実は裏話があるんです。私たちがオファーした際のメールアドレスが古かったものらしく、メッセージに気づいていただけてなかったんですね。2-3ヶ月連絡が無く、興味を持ってもらえていないのかなと思いましたが、「別の伝手を辿って直接お願いし、ダメなら諦めよう」と思い、連絡したら無事に承諾いただけました。もしあそこで再アプローチをしていなかったら、まったく別の作品になっていたかもしれません(笑)。

―現在、佐々倉のみ公開となっているキャラクターデザインについて、監督や植田さんとディスカッションされた点はありますか?
最初、植田さんに数パターンの佐々倉を描いて頂きました。当たり前ですが、「どれも本当に上手いなぁ!」と、皆で楽しみながら見させて頂きました。最終的にデザインを固めて行く際は、原作の雰囲気を踏襲しつつ、今の時代のアニメ用にアップデートしたものに出来たらとディスカッションして素敵なキャラクターデザインにして頂きました。



―バーの取材にも行かれたそうですが、印象的だった出来事はありますか?
当然ながら本作には数多くのカクテルが出てきますが、作中で佐々倉が、いかにすごい技術を使って作っているのかを肌で感じるため、実際にバーに伺って登場するカクテルを何パターンも実際に作っていただいたんです。味や香りの違いが作中で表現されることもあったので、沢山飲みました(笑)。また、倉谷監督と主要スタッフの方々でバーを訪ねて、シェーカーの振り方などの動きを撮影したり、作中に登場するカクテル全てを実際に作って頂いて撮影をしたりと本物に拘って取り組んで頂いています。撮影時にはカウンターにものすごい数のカクテルが並んでいて、普段バーで見られない光景だったので印象的でした。

―本作の魅力を出すため、意識したことや気を付けたことはありますか?
私は元々お酒が好きで、バーに行くことも多かったのですが、バーテンダーさんの本当のすごさを知ったのは原作を読んでからでして。佐々倉は洞察力に優れたところがあるのですが、実際のバーテンダーさんも同じような能力を持っている方が多いんですよね。
バーテンダーさんのすごさの見せ方として「カクテルの作り方や客との接し方などの『スキル』」があるな、と思いましたので、大会でも優勝されている著名なバーテンダーの方々にアニメの監修をお願いしました。バーの世界に詳しい方でも納得のいく出来になるのではと思いますのでご期待ください。
もうひとつこだわっている点は「お酒の美味しそうな見せ方」です。「究極の追体験アニメ」を目指したいと思い、制作に取り組んでいるのですが、アニメをご覧になったみなさんが「自分もバーに行ってみたい!」「あのシーンで飲んでいたカクテルを飲んでみたい!」と思ってもらうために、そのあたりの表現は必須だと思いまして。倉谷監督を中心にかなり力を入れて取り組んでいただいています。

―シナリオにもバー、バーテンダーさんの魅力を感じられるようなこだわりがあるとか。
國澤さんが「お酒やバーと人間ドラマの結びつき」という作品の“肝”の部分を見事に表現されているんです。お酒の知識を学べるだけの作品ではないので、そこはうまくまとめていただきました。
近年では世界での日本のバーテンダーの躍進ぶりが目覚ましいですし、若者向けのカジュアルなバーも出てきているので、多様性は広がっていると思います。作品からもその雰囲気が伝わっていたら幸いです。

―美和と由香利が、さまざまなバーを訪れるシーンもいいアクセントになっています。
最近の若い方たちは、本格的なバーにお酒を飲みに行く機会が少なくなっているのかなと感じます。若い彼女たちに自分を重ね合わせながら観ていただけると、また違った楽しみ方ができると思います。
「お酒に詳しくないと、バーに行っても面白くない」と誤解されがちなのですが、詳しい人は注文したいお酒が決まっているので、飲みたいものをそのままオーダーすることが多いと思います。でも、あまりお酒に詳しくない方はバーテンダーさんに「さっきこんな料理を食べてきたんだけど、食後に合うお酒を教えて」などと相談しながら決めていくので、むしろバーテンダーの魅力に、より多く触れられるんじゃないかと思いますね。

―ちなみに、スタッフ陣はバーに行かれるのでしょうか?
國澤さん、植田さんは元々よくバーには行かれているようです。倉谷監督は本作をきっかけにお酒・バーにハマったそうです。監督は研究熱心な方と伺っていましたが、作品の制作が始まってからは、実際に自宅でカクテルを作ったりされているそうです。「追体験アニメ」と言うからにはリアリティが大事じゃないですか。「イーデンホール」は実在のバーではありませんが、「架空の町の架空のバー」ばかりだと視聴者の方も没入しづらいと思うんですね。ですので、実在の街を舞台にしていますし、実在のバーを登場させたりもしています。
制作に関連して連絡を取らせてもらったお店の方々に「アニメを通じて、バーやバーテンダーの素晴らしさが伝われば」とおっしゃっていただき、うれしかったです。城先生が普段からバーに行かれているというのも大きかったですね。

―5月の連休中に徳島で開催された『マチ★アソビ』では『バーテンダー』の世界をイメージしたノンアルコールカクテルが販売されました。
プロデュースしてくださったバーテンダーさんは原作を読んでくださっていて「このエピソードの、このカクテルを基にアレンジしてみましょうか?」と提案してくださったんです。ご自分から発案してくださったうえ、とてもいい仕上がりで感動しました。




―改めて、バーやバーテンダーの魅力を教えてください。
日本のバーテンダーには、技術や味を突き詰める方が多くいらっしゃるんです。例えば、カクテルを氷を入れたグラスの中で混ぜていると、ある瞬間にお酒の香りがフッと変わるので、そのタイミングで混ぜるの止める必要があるらしいんです。なので、混ぜる時には香りに集中している……というバーテンダーさんがいたりして、ストイックなところに惹かれます。
また、店内の空間づくりを含めて居心地のよさをうまく作られる方が多いですね。お客さんに座ってもらう位置には意味があって、「この人とこの人は隣にすると会話が生まれそう」とか「この人は静かに飲みたいんだろうな」とかいろいろ考えながら配しているらしいんです。
提供している飲み物以外でも、魅力はたくさんありますね。



―最後に、メッセージをお願いします。
素晴らしい原作をアニメという形でご提供できるのがうれしいです。作品をきっかけに、実際にバーを訪れる人が少しでも増えたら幸いです。最近はノンアルコールのカクテルも増えてきていますので、お酒が苦手な人でも楽しんでいただけると思います。
またアニメ放送に先立ち、バーとお酒のコミュニティ「BAR活BASE」がWEBにて展開中です。バーの楽しみ方や、漫画『バーテンダー』の名シーンなども語り合える場になっていますので、気になった方はぜひのぞいてみてください!